おかげさまで怪談のストックが三百を超えた。
ありがたい。感謝。
こんなにもたくさん怖い話や不思議な話が集まるとは当初は思わなかった。
おとんの言うとおりである。
実際のところ私のストックの中には死ぬほどえげつない怪談話なんか少しもない。
ほとんどが些細な目撃談である。
「なにか妙なものを見た」「普通はあり得ないんです」と言うような、不思議なものに遭遇したという、そんな話ばかりだ。
さて、怪談を語る上でよく話題に上がるのが
「不謹慎」
怪談好きだろうが嫌いだろうが、人の死をエンタメとして扱うことには、違和感や嫌悪感を抱く。
私もよく言われる。
ただ、私の話す怪談は、ほぼ全てが人の死に関わらない。
いくつかあるが、それもやはり怪談会ではなるべく話さないようにしている。
「幽霊の話をするのなら、全部人の死に関わるものなのじゃないの?」
という意見もあると思う。
たしかにそうだろう。
それが幽霊なら
ただ私は幽霊というものを信じていない。
どういうことかというと
「亡くなった人間が幽霊となって現れる」ということを信じていない。
例えば
深夜の山中のトンネル、すれ違う対向車線の車のボンネットに女が正座で乗っていた。
車は女を乗せたまま後方に消えて見えなくなっていった……
という怖い話をしたとき。
私はそれを亡くなった女の幽霊だとは思わない。
霊能者なら「それはその車のドライバーに恨みを持つ女の幽霊です」
とでも言うのかもしれないが、だとしても「へえ~」と思うだけである。
否定はしない。深く信じもしない。
怪談が不謹慎だとしたら、それは人の死を扱うからだ。
深夜の山のトンネルに出る女を「そこで死んだ人の亡霊なのだ」と、人々が思っているだけで
私はそれを「なにか得体のしれない存在」だと思うだけで、そこに人の死も何もない。
怪奇現象は怪奇現象でそれ以上でもそれ以下でもない。
駅のホームに半透明のおじさんが立っていたとしても、それは駅のホームに半透明のおじさんが立っているという怪奇現象に過ぎない。
それがおじさんの幽霊だとは思わない。
「じゃあ正体はなんなんだよ」
知らない。わからない。でもお化けとか幽霊という言葉は使う。わかりやすいから。それは許して
「死んだらどうなるん?」
知らん。でも多分苦しみのない穴の中に帰るのだろう。
ゴリラのココが言っていた。
あまり理解してもらえない
理解していただけたなら私の怪談話をご覧になってほしい。
多分気に入ると思う。